この夏は、リオオリンピックが毎日の話題に花を添えています。
それぞれの選手が自信を持ってその力を存分に発揮し、手にするメダルの裏に、それまでに積み重ねた計り知れない猛練習の努力故と思うと、こちらも奮起せずにはいられません。

個人の努力もさることながら、体操団体総合に始まり、シンクロ、バドミントン、そして男子リレー400メートルなど、信頼できる仲間とのチームプレーによって、その素晴らしい力がさらなる結果を生み出しました。卓球女子三人娘の活躍にも感動しました。最後まで諦めない粘り強さ、集中力、そして信頼できる仲間との強い絆によって、選手たちは素晴らしい姿を魅せてくれました。

さて、わがクラスの『三人娘』が揃ってこの夏、巣立つことになりました。

幼少期からスタートし中学生、高校生になって、自分の歩む道が少しずつ見えてきた初夏、
その三人からそれぞれの思いを伺いました。この春からの高校生活の中で模索中のおっとりRちゃん、シャイでしっかり者のSちゃんはサッカー少女、おとなしかったYちゃんは現在燃えている吹奏楽部に熱心な高校進学を目指す受験生。三人とも、可愛い可愛い生徒さんたちでした。3人なりに後輩たちの面倒をよく見てくれて、微笑ましいものがありました。

急に去ってしまう彼女たちにとって、バイオリンが、この先、子供の頃のどんな思い出として残るのか、私にはわかりかねます。もちろん、またいつの日かバイオリンの音色を楽しんでくれたら…と願います。

音楽は一生楽しみ続けられる世界です。
ご両親が整えてくれた大切な土壌に、一緒にひとつの種を蒔き、今まで大切に真剣に育ててきたつもりですが、 もっともっと指導者として、伝えられたことがあったのではないだろうか・・・と自問自答しています。

厳しい訓練の中でも続けたいと思う心はどこから生まれるのでしょう。
アスリートたちも『競技が好き』だから続けられる・・・

幼児期に好きで始めたバイオリン、約10年の間に、どれだけの基盤を作れて、そして思春期に差しかかった時も、本人自身の中にバイオリンが好き、いかに音楽と向き合う道を見い出せさせてあげられるか。
その時々のお子さんの意欲(栄養状態)を観察しながら心理をつかみつつ、方向性を見極め、厳しい訓練も楽しい結果が見えるまで、潰さないで背中を押し続けていく、ということなのでは。

それぞれ芽が出て、苗が育つと同時に根が育ち、茎が伸びて蕾をつけます。
あらためて、大人サイドが育てられる範囲は、種から苗、根の部分をいかに深く広くしっかりと根を張ることができるのか、にかかりほぼ10歳までに決まってくるなぁ、と実感します。

バイオリンを一生の友として、生涯楽しめる音楽世界だからこそ、
これからも、子どもの力、未知なる可能性を信じ、親子の絆と共に、信頼できると思われる指導者になれるよう、日々精進したいと思います。

オリンピック本番を堂々とこなす選手たちと同じく、いざという時に、どの生徒さんも、自身が身につけた力を充分に発揮できるように、
それまでにどれだけのより多き訓練回数を重ねられるか、より工夫多き指導ができるのか、そのためにできるサポートは何か、親御さんと一緒に考えていきたいです。

幼い頃からバイオリンと共に、家族と過ごした貴重な絆と時間とその思い出が、我がクラスの『三人娘』たちのこの先の人生の何かの糸口になりますように。

2016年盛夏 佐藤 潤